徐安h著、東美晴・角田幹夫・張一梅訳「中国上海における恋愛と結婚」
『流通経済大学社会学部論叢』第13巻第1号,2002.10[25]

 本稿は『世紀之交中国人的愛情和婚姻』(徐安凍編,中国社会科学出版社,1997)中の第8章「上海人の愛情と婚姻」の全訳である。『世紀之交中国人的愛情和婚姻』は上海社会科学院において1995年から1996年にかけて行われた「中国社会転換期的婚姻質量研究」の結果をもとにしている。この研究では、上海、広州、甘粛、ハルピンの4地区において、それぞれ800組の夫婦を対象に面接法による質問紙調査が行われた。(「訳注」より)

 市場競争が社会の分化を一層促すに従い、職業、収入、社会的地位等の面において夫婦間の差異も大きくなるだろう。それによって、それぞれの持つ自己資源、価値観、結婚に対する要求の変化が親方の心理約バランスを崩すために、夫婦関係において調和を失うことも多くなるであろう。また、文化市場の開放、社会の流動化、生活水準の向上によって、人々の視野や交際範囲が拡大され、それに従い婚姻に対する意識、考え方、行動方式も変化していくだろう。恋愛や結婚により高い質をもとめ、選択の自由化、多様化も更に進むであろう。しかし、どんなに思想的に開放された上海であったとしても、離婚は未だ重い代価を伴う違反であり、イレギュラーで不名誉な行為だと見なされている。婚姻関係に対する適応や愛情の更新は誠意や芸術性の必要なことである。夫婦間での争いを止められず、困惑している人たちは、もういくばくかの忍耐とテックニツクが必要なのであろう。
 現在は社会の過渡期であり規範が緩くなっているために、一部では私欲が先行し、道徳や義務が忘れ去られている。そして、誘惑にあらがえず婚外交渉に至り、配偶者や子供を傷つけることもある。これもまた婚姻の不安定要因の一つとなるであろう。
 本稿では、婚姻関係の質を高め、安定をもたらすための規律を探ることを目標に、上海における恋愛と婚姻の現状のついて、そのアウトラインを描いてきた。具体的には、両性が出会い愛しあうまで、婚姻に至りお互いに作用しあっていくまで、そして両性の意識に分岐が生まれて再び共同認識に達するまで、さらには両性の衝突から離婚の過程およびその心理、行動を詳述した。以上を通し、夫婦という異質なものを整合させ、調和させる共生の規律を提示してきた。(本文より)