島・半島・大陸
―風土による日・韓・中・三国文化の異質性―

(報告要旨)

岩手県立大学 王少鋒

 日・韓・中・三国は仏教、儒教、道教などの東洋思想と漢字文化を共有しながらも、三国の風土条件の違い、歴史の違い、言語の違いから三国の文化、国民性も大きな違いを見せている。今まで日・韓・中・三国の文化型について数多くの研究者がそれぞれの着眼点から,さまざまな分類をしているが、三国は島、半島,大陸という三つの異質な地理的条件をもっており、地形という風土的条件の相異点から、三国の文化型として次のような試論を提出してみた。島国の日本は受信文化・融合文化である。半島の韓国は通路文化・徹底文化である。大陸の中国は発信文化・併存文化である。

1. 島文化(受信文化・融合文化)

 日本の風土の特質が日本の歴史と文化に大きな影響を与える。島国の日本は、四周を海にかこまれ世界から隔てられている。この地理的条件によって、日本は外敵の侵略と異民族の支配がなく、周囲から文化や技術などを吸収し、「島国」の中でそれを融和させて、独自の文化を磨きあげ築きあげてきたのである。外国との交通が海に隔てられ、発信的な文化型は形成しにくいので、自ら外国の文化を積極的に受けいれる受信的な文化型を形成してきた。日本文化の本質は受信文化である。外来文化の受信能力が世界一である日本から発信することはほとんどない。日本は外来文化を選択して受信するだけにとどまらず、さらに受信した外来文化を巧みに融合して日本化する。古代朝鮮や中国から漢字や儒教、仏教、道教など宗教思想を導入し、近代欧米の新文明を吸収し、更にそれを自国に適応しようと、工夫に努めた。
 受信文化の特徴として、選択の可能性があること。日本は海に守られて外来侵略と異民族の支配がないため、受け入れる側の意識や都合を無視されるような押し付け、強制的な外来文化の受信は全くない。

2. 半島文化(通路文化・徹底文化) 

 半島は、島から大陸へ、大陸から島への通路であり、島と大陸との結節点である。交通不便な古代においては、島よりはいち早く大陸文化を取り入れることができた。また、それを島国の日本へ伝える役割を果たした。朝鮮半島は大陸文化を日本に伝播する通路となった。しかし、半島という地理的条件から、韓国は大陸と島との両方から武力による侵略や支配を受けることが絶えなかった。半島の全歴史を通じて常に大きい外圧が加わり、国土内で兵火や騒乱が絶えず繰り返された。半島は文化伝播の通路だけではなく、大陸の武勢が島へ、島の武勢が大陸へ攻め込む時の通路でもあった。
 徹底化するのは半島文化が外来文化を受容する時の基本的な姿勢である。日本のように外来文化を変容させて受け入れるというのとは対照的に、韓国では丸のまま受容して、半島における外来文化の受容は、変容させることなくそのまま受け継ぐのが特徴である。そして、受容した外来文化を徹底的に実践するか、あるいは徹底的に放棄するかの二者択一をするのももう一つの特徴である。中国から受容した儒教と漢字はそれぞれの例である。韓国における儒教と漢字の発展史は、最もよく韓国文化の徹底化傾向を表している。

 3. 大陸文化(発信文化・併存文化)

 大陸という独特の地理的条件によって、陸地は果てしなく続いており、56の民族が住んでいる。それぞれの民族は独自の文化をもっており、互いに影響したり、されたりしているのであって、大陸文化は併存文化だといえる。そして、中国大陸では黄河流域を中心とする「馬」の文化と、揚子江流域を中心とする「船」の文化と、大きく二つの文化型に分けられ、南北の生活様式や風俗習慣は対照的となっている。地域や民族によって異なるさまざまな文化が広大な陸地に併存しているのが大陸文化の特徴である。
 大陸文化のもう一つの特徴は発信型文化である。中国の文化史の中に、中国は殆ど発信的な役割を果たしてきたが、唯一受信したのはインドの仏教も中国で中国固有の儒教と道教の影響を受け、中国仏教に変身させ、そして、中国からアジア諸国へ伝播していった。大陸という交通便利な地理的条件によって、中国文化はどんどん周囲に向かって拡がっていく。漢字をはじめ、儒教、中国仏教、道教などを朝鮮半島、日本、ベトナムなど周囲の国に伝え、中国の四大発明である紙、印刷術、羅針盤、火薬を世界各地に伝えていった。

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